#1 数学は社会に必要不可欠!?
#0(https://8books.jp/story/detail/5694/)で紹介したように、数学と社会の関わりを調べるにあたって、私は数学の有用性について初めて認識した。
だからこそ数学と社会の間に溝があることがとてももったいないとも思った。
そこで、まずは数学の有用性について、紹介させていただいて、その役割の大切さを感じてもらうと同時に(あわよくば)「数学を知らないことはもったいない!」と思っていただけたらとても嬉しい。
数学が具体的にどのように社会に活用されうるのか、という問いに対して、具体的なイメージが湧く人は少ないと思う(前の章で書いたように私もそのうちの1人だった)。
ただ、情報化が進む現代において、IT関係などにおいて数学が重要な役割を果たしているというイメージはそれなりに広まっていると思う。
そのイメージの通り、数学はITの分野において要とも言える役割を果たしている。
たとえば、機械が与えられたデータから自ら学習する機械学習については誰もが聞いたことがあると思う。
この機械学習において、ただ結果を活用するだけなら学習のプログラミングさえできれば問題ないかもしれないが、人間とAIの共存・協調のためにはその結果の根拠を人間が知る必要がある。
そこには高度な数学の技術が欠かせない。(1)
他にも、情報社会においてプライバシーの問題は深刻であるが、プライバシーを守る暗号の技術も数学の知識によるものだ。
素数や楕円曲線を用いた暗号などによって情報社会における安心は支えられている。
少し調べてみたのでRSA暗号という暗号を紹介させて欲しい。数式は使わないが少しわかりにくいかもしれないので読み飛ばしていただいても構わない
RSA暗号と呼ばれる暗号は、巨大な素数同士の掛け算は簡単だがその素因数分解はコンピュータでも難しい(時間がかかる)ということを利用した暗号で、web通信やデジタル署名などに活用されている。
暗号を受け取る人(受信者)が2つの素数を掛け算してから公開して、暗号を伝えたい人がその数を使って暗号を作り、その暗号を受信者が元の素数を使ってメッセージに読み替えるのだが、元の素数が分からないと暗号が解けない仕組みを数学が作っているのだ。(2)
暗号技術には他にも種類があり、どれも数の性質を使っている。このように、数学は情報社会の発展だけでなく、安全な情報社会を作ることにも大事な役割を果たしているのだ。
例が情報社会に偏ってしまったが、他にもコロナウイルスなどの感染者数を予測する数理モデルの作成やその他様々なシュミレーションなど、挙げ出したらきりが無いほど沢山の場面で数学は活躍している。(3)
さて、長々と文章を続けてしまったが、「数学すごいじゃん!」という筆者の感動が文章越しに少しでも伝わっていたら嬉しい。
参考文献:
(1)「数理資本主義の時代~数学パワーが世界を変える~」 経済産業省 2019
(2)「情報数理:暗号理論入門 」 高畑弘 2006 https://www2.u-gakugei.ac.jp/~takalab/informathz.pdf
(3)「社会に最先端の数学が求められるワケ⑴---新しい数学と産業の協奏」 岡本健太郎 他 2022
コラム「あくまで主観です」
どの学部学科にも言えることだと思うが、数学科には専門的すぎて同じ学科にしか伝わらない用語・話題が沢山ある。
専門用語・話題は同じ学科の者同士内輪で盛り上がるのも楽しいし、違う学科の者同士で学科自慢し合うのもまた楽しい。
そんな、コアなネタ好きの私をわくわくさせてくれるものに出会った。”理系ネタLINEスタンプ”だ。
「化学科のための~」「ゆかいな微生物の~」など、種類は様々。理系の友人に教えてもらい、その種類の多さやニッチすぎる内容に興奮が抑えられず、思わず「かわいい~!」と大きな声を出してしまった。喜ぶ私を見て友達が数学科スタンプをプレゼントしてくれた。
このスタンプ、あまりにニッチで日常会話で使える場面はほとんどない。
それでも数学科の仲間内では盛り上がったり、数学科以外の人が「なにこれどう言う意味なの?!」と興味を持ってくれたりと、数学を介してわいわいできる機会を与えてくれた。
これからもほどほどに使っていきたい。
記事を書いた人
花木
8BOOKs SENDAI学生部
2002年、長野県出身。2021年東北大学理学部数学科入学。入学当初、興味の対象は主に純粋数学だったが、最近は数学の知識や数学的思考を社会に役立てる応用数学にも興味を持っている。ゆくゆくは,8Booksで子ども達を対象に数学の魅力を伝える企画なども行いたい。